ポトは、たくさんの涙のしずくの中から生まれました。
ポトの左のめじりには、泣きぼくろがひとつ。
もちろんポトは泣き虫で、いつも泣いてばかりいます。
「でもね。悲しい涙ばかりじゃないんだよ」
ポトがいいます。
そうですね。涙は、悲しい時だけ流れるわけではありません。
でも、ほら。あそこで泣いている子の涙は、きっと悲しい涙です。
「悲しいね」
そういうと、ポトは、その子の隣に座りました。
ポトの目からは、もう、涙がこぼれています。
「ぼくも一緒に泣くよ。だから、いっぱい涙を流そう。泣いたって、悲しみはなくならないけど、いっぱい涙を流したら、心が洗い流されて、悲しいことを知っている心は、きらきら、きらきら、輝くんだよ」
ポトは、その子に、心のきらきらを見せてあげました。
すると、その子の涙が止まりました。
「今度、悲しい人を見つけたら、そのきらきらを見せてあげてね!」
ポトは、バイバイと、手を振りました。
口をへの字に曲げて立っているのは、嘘をついた男の子です。
ポトがその子のところへ行くと、その子は、あっちを向いてしまいました。
「嘘をついたっていいんだよ。みんな嘘をつくんだもの。でも、正直にいいたいんだったら、泣いたらいいよ。泣いたら、涙と一緒に、ほんとうも出てくるからね」
ポトがいうと、その子の目から、涙が出ました。
「きみは、いい子だね。ちっとも、嘘つきなんかじゃないよ!」
ポトは、嬉しくて泣いています。
「ごめんなさい」
と、男の子がいいました。
「きみって、最高にいい子だね。ごめんなさいの言葉は、宝物だね!」
ポトは、その子を抱きしめました。
その子は、ほんとうを伝えに行きました。
ポトは、その子の後ろ姿に、バイバイと、手を振りました。
次に、ポトが出会ったのは、こぶしを握る男の子でした。
「くやしいことが、あったんだね」
男の子の目から、涙がこぼれました。
「泣いたっていいんだよ。泣いたって、負けたことにはならない。心が軽くなって、また歩き出せるよ!」
男の子は、握っていたこぶしで涙を拭くと、にっこり笑いました。
「きみって、すごいね。くやしさを乗り越えたら、ずっと先に進んでいけるよ!」
ポトは、バイバイ。
手を振りました。
その次にポトが向かったのは、がんばっている人のところでした。
がんばっている人に涙なんて、なんだか不思議ですね。
ポトは、いいます。
「いつもいつも、がんばっているのは、すごいね。でも、たまには弱音吐いたって、ちっとも悪いことじゃないんだよ」
ポトは、その人の肩に手を置くと、肩に入った力を、
「少しだけ、ここに置こうよ」
そういって、床に下ろしました。
その人は、泣いています。
「この肩の力が、涙の重石になっていたんだよ。時々こうして、肩の力を取ってあげて、溜まった涙を出してあげてね。心が軽くなって、また明日から、がんばれるんだよ!」
その人が涙を流したら、床に置いた肩の力も、いつのまにか消えてしまいました。
「あれ? どこかに行っちゃったよ。でも、いいよね。あんなものいらないよね」
ポトはそういうと、またバイバイと、手を振りました。
今度は、寂しくて泣いている女の子です。
その子は、ポトに、
「どこにも行かないで! ずっと、一緒にいて!」
と、いいました。ポトは、
「うん、いいよ。ずっと一緒にいようね」
と、いいました。
するとその子は、安心して、ポトにくっつきました。
「寂しい時には、寂しいっていって、ぼくと泣こうよ。泣きながら眠ったら、新しい朝が来て、朝日がきっと、元気をくれるよ!」
ポトは朝まで、その子と一緒にいました。
朝になると、その子は笑顔で、
「バイバイ」
と、ポトに手を振りました。
「なんだかぼくが、寂しくなっちゃった」
ポトは、ひざを抱えて、泣いてしまいました。
しばらく泣くと、立ち上がって、歩き出します。
「じっとしてたら、出会えないもん。寂しいから、歩くんだよ」
すると、歩いているポトは、喜びの涙に出会えたのです。
「ほーらね! 生きてるっていいね! 喜びの涙に一度だけだって出会えるんなら、辛い涙を、いっぱい流したってかまわないんだよ! 辛い涙はみんな宝石になって、自分を輝かせてくれるんだもん!」
ポトは、太陽の光に、月の光に、きらきら輝いています。
「ぼくは、泣き虫だけど、ちっともかまわないんだよ! だって、涙のしずくの中から生まれたんだもん! だから、ぼくは、涙が大好きなんだよ!」
泣き虫なポトは、人差し指の背で、泣きぼくろをそっと撫でていいました。
あなたもジンドゥーで無料ホームページを。 無料新規登録は https://jp.jimdo.com から
しがみねくみこ (日曜日, 29 1月 2023 12:24)
あなたのそばにも、ポトがいますよ。(*^_^*)