100ねんかんカエルになるばくだん

「ケロケロ、ゲロゲロ」

 カエルたちが なかよく くらしています。

 そこは みらいのちきゅうでした。

 ちきゅうには にんげんは ひとりもおらず、そのかわりカエルで あふれかえっていたのです。

 

 カエルたちは、もとは にんげんでした。

 せかいせんそうを はじめた にんげんたちは、ちきゅうのあちこちに ばくだんを おとして、とおといいのちを ぎせいにし、しぜんはかいを していたのです。

 

 そこへ、トアールはかせが

 『100ねんかんカエルになるばくだん』を はつめいしました。

 そのいりょくは たいしたもので、ばくだんひとつで、そのくにじゅうの ひとたちがみんな、

「ケロケロ、ゲロゲロ」

 カエルになってしまうのです。

 せかいのあちこちに、このばくだんは おとされ、

「ケロケロ、ゲロゲロ」

 とうとう にんげんは みんな、100ねんかん カエルにされてしまったのです。

 

 カエルになった にんげんたちは、たちまち なかよく くらしはじめました。

 もう ぶきも ばくだんも つかえないのですからね。

 そして じぶんたちのした しぜんはかいに おどろいてしまいました。

 カエルになってみて はじめて きづいたのです。

「このつちは なんてきたないんだ」

「このみずなんて くらせたものじゃないぞ」

 にんげんに もどったら まっさきに しぜんを とりもどそうと おもったのです。 

 それから、どのくにも 『へいわじょうやく』をむすび、 

「にんげんに もどっても せんそうは しない」 

 と、ちかいあったのでした。

 トアールはかせの はつめいした『100ねんかんカエルになるばくだん』の せっけいずも じめんの おくふかくに ふういんされることになりました。

 

 そうして、いつしか 100ねんが すぎたのです。

 

 カエルたちは にんげんに もどります。

 すると どうでしょう。

 ふういんしたはずの『100ねんかんカエルになるばくだん』の せっけいずを こっそり のぞきにきたものがありました。

「おうさま、せっけいずは こうでした」

「ふむふむ」

 また、どこかのくにのものが こっそりと。

「だいとうりょう、せっけいずには こうかかれていました」

「ほうほう」

 そのうち、せっけいずを だれかが ぬすんでいったものですから、たいへんです。

 せかいじゅうのくにが おこりだしたのです。

「せっけいずを ぬすんだくには どこだ!」

 

 『へいわじょうやく』も たちまち やぶられてしまいました。

 ちきゅうの あちこちに ばくだんが おとされ、せかいせんそうが はじまってしまったのです。

 とおといいのちを ぎせいにし しぜんはかいをし、そしてまた『100ねんかんカエルになるばくだん』が おとされました。

 

 ……。

 

「ケロケロ、ゲロゲロ」

 カエルになった にんげんたちは、またなかよく くらしはじめました。

 

「このつちは なんてきたないんだ」

「このみずなんて くらせたものじゃないぞ」

 けれど こんどは『100ねんかんカエルになるばくだん』は ふういんされず、にんげんに もどるたびに、このばくだんを まっさきに せかいじゅうに おとすことになりました。

 

 みらいのちきゅうには、なかなかちえのある かしこいカエルたちが、

「ケロケロ、ゲロゲロ」

と、なかよく くらしていたのです。

 

作 しがみね くみこ

コメント: 1
  • #1

    しがみねくみこ (日曜日, 27 3月 2022 11:55)

    ウクライナのことには、毎日、心が痛みます。
    早く停戦を!