小さな魔女と小鳥は、なかよしでした。
どこへ行くのも、いっしょ。
歌うのも、いっしょ。
「ルーララ、ルララ」
「ピーピピ、ピー」
魔女が歌うと、魔女の黒いスカートから、花がこぼれます。
「きのうは黄色。今日は赤。明日はピンクよ。ルーララルー」
「ピーピピ、ピー」
魔女のスカートから、あふれ出す花は、地面に着くと、ほろりと壊れ、地面はその花びら色に染まっていきます。
魔女の住む丘は、毎日、色を変えました。
きのうは黄色。今日は赤。明日はピンクに。
「ルーララ、ルララ」
「ピーピピ、ピー」
小鳥は、魔女の頭の上。
それから、肩へ。
指先へ。
とまりながら、歌います。
「ルーララ、ルララ」
「ピーピピ、ピー」
魔女と小鳥は、なかよしでした。
どこへ行くのも、いっしょ。
歌うのも、いっしょ。
でも、魔女と小鳥の寿命は、ずいぶん違っていたのです。
「ルーララ、ルララ」
「ピー、ピピ、ピー」
小鳥の歌声が、かすれるようになりました。
それでも魔女は、小さい魔女のまま。
「どうしちゃったの?」
魔女が訊きます。
「ピー、ピピ、ピー。なんか、へんだね」
「ルーララ、ルララ」
「ピー、ピピ、ピー」
「今日は、紫。ルーララルー」
そのうち、小鳥は、魔女の肩にじっととまって、あまり飛ばなくなりました。
「ルーララ、ルララ」
「ピー、ピピ、ピー。ぼく、生まれ変わったら、魔法使いになるよ」
「それはいいわ! そうしたら、ふたりで丘を染めるのよ。きのうは水色。今日は青。明日は、オレンジ。ルーララルー」
魔女のスカートが揺れ、青い花がこぼれます。
そうして、ある日、小鳥は、歌わなくなりました。
魔女の手のひらの中で、かたく、じっとしたまま。
魔女は、しゃがみこむと、ひとりで歌い出しました。
「ルーララ、ルララ。ルーララ、ルー。今日は黒色。真っ黒よ」
真っ黒な花などありません。
魔女のスカートからあふれ出したのは、黒い石ころ。
「ルーララ、ルララ。ルーララ、ルー。今日は黒色。真っ黒よ」
石ころは、花びらのように、ほろりとは壊れません。
歌い続ける小さな魔女を、とうとう、包み込み、そこには小さな黒い山ができました。
山の奥から、かすかな歌声が聞こえます。
それから、何年も何十年も過ぎたころ、ひとりの魔法使いがやってきました。
黒い山に耳をつけると、
「ぼくとの約束を、忘れてしまったんだな……」
魔法使いは、山の石をどかし始めました。
ころころと、黒い石が転がっていきます。
中から現れたのは、小さなままの魔女でした。
「ルーララ、ルララ。ルーララ、ルー。今日は黒色。真っ黒よ」
魔女は、まだ歌っています。
涙を流しながら。
「ピーピピ、ピピピ。もう、そろそろ、違う色にしないかい?」
魔女は目を大きく開けて、魔法使いを見ました。
それから、手のひらの中に目を落とすと、
「あっ」
小鳥はいなくなっていました。
「あなたなの?」
「そうだよ。約束しただろう?」
「よかった。ほんとうに、よかった」
魔法使いの差し出した手を、魔女は握りました。
立ち上がると、歌い出します。
「ルーララ、ルララ。今日は、白」
魔女のスカートから、白い花がこぼれます。
「ルーララ、ルララ。今日は、白」
魔法使いも歌います。
すると、その手のひらから、白い花がこぼれました。
「ルーララ、ルララ」
「ルーララ、ルー」
丘は白く染まり出し、歌声は、いつまでもいつまでも続いたのでした。
作 しがみね くみこ
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しがみねこみこ (日曜日, 24 4月 2022 16:32)
まえのりさん!
個展、おめでとうございました。(*^^*)
きっと、まえのりさんの絵に、心癒されたと思います。
これからも、創作を楽しくがんばれますように。
来てくださって、ありがとう!
まえのり (日曜日, 24 4月 2022 09:16)
しがみねくみこ様
告知いただきありがとうございます!
ちゃんと伝えられなくて、ごめんなさい〜(^人^)
2022年4月24日、本日が企画展最終日です。
23名の素敵な作家さんの作品が展示されています。
お近くの方は、ぜひご覧いただきたいです^^
しがみねくみこ (土曜日, 23 4月 2022 00:06)
京都・園部「Pot Hole Gallery」はおうちみたいなギャラリー
です!(*^^*)
しがみねくみこ (土曜日, 23 4月 2022 00:05)
URL、飛べませんねー。
ごめんなさい!
しがみねくみこ (金曜日, 22 4月 2022 23:59)
http://lovesap.fc2web.com/sakuhin03.htm
「LOVE SAP 世界の子供たちに絵本をおくろう会」
昔、創作していたころ、活動していた会です。(*^^*)
アフガニスタンに、手作りの絵本を贈りました。
その時に、ご一緒していた方が、「童話のかたち展」に出展されています。
お近くの方はぜひ!
https://nantangirl.me/2021/05/24/potholegallery/
彼女は教えてくれなかったけど、たぶんここです。
あさってまでです。
よろしくお願いします!
しがみねくみこ (日曜日, 10 4月 2022 20:52)
私に童話を書くことを勧めてくれた大好きな人を想って書いた作品です。
当時、その人は闘病中でした。
その人はもう、病で亡くなってしまいましたが、今も月の光になって、私のことを見守ってくれている気がしています。
このホームページのタイトルも、そのことを想ってつけました。
読んでくださって、ありがとうございます。