「いちじーく、にんじん、さんしょに、しいたけ、ごぼうに、むかご。ななぐさ、はーじかみ、くねんぼに、とおがーらし」

 クルミちゃんとノンちゃんが、縁側でおてだまをしていると、庭の草かげから長い耳をピーンと立てたまっ白うさぎ。

「うーん。みんな、おいしそう!」

「おいしそうって、なんのこと?」

「うたのこと。だって、みんな食べ物の名前だもの。ぼくのところには、ぺったんぺったん、お餅しかないんだよ」

 ふたりは、ひとつひとつ、指折り数えます。

「いちじーく、にんじん、……、ごぼうに、むかご? ねえ、むかごってなあに?」

「山の芋。山の芋の葉っぱのそばに、丸いのがなるんだよ。とろとろ、おいしい山の芋」

「ふーん」

「いちじく、にんじん、……、くねんぼ? じゃあ、くねんぼは?」

「そりゃあもう、おいしい、あまーい、みかんのことさ」

 みかんなら、クルミちゃんもノンちゃんも、

「食べたいなー」

「でもどうして、うさぎさんのところには、ぺったんぺったん、お餅だけ?」

「だってぼく、あそこから来たんだもの」

 うさぎは、お月さまを見上げます。

 クルミちゃんとノンちゃんは、目をまるくしました。

 すると、うさぎは、

「ねえ、ぼくに、そのおてだま、くれない? そしたら、そしたらおしるこをごちそうしてあげる」

 おしるこなら、ふたりとも、大好物です。

 ノンちゃんはもう、おてだまをさしだしていました。

 うさぎは、うたいます。

「おてだま、中身は、おいしいあずき。あずきを水にひたしたら、あまい、おしるこ作りましょう。ぺったんぺったん、お餅つき。お餅を小さくまるめたら、しるこの中に入れましょう。あしたになったら、また来るよー」

 次の日、おかあさんが、新しいおてだまを作ってくれました。

 中身はほんとに、赤―いあずき。

「まっ白うさぎのいってたことは、ほんとうだったんだねー」

「おいしいおしるこ、できたかなー?」

 クルミちゃんとノンちゃんが見上げると、

「できたよ、できたよ。おいしいおしるこ」

 夜空から、まっ白うさぎ。

「さぁ、さぁ、こちらへ。さぁ、どうぞ」

 ぴょんぴょんはねる、うさぎについていくと、そこは月明かりに照らされた野原でした。

 そばには、つまれたお餅が山ほどあります。

 あみにのせられたお餅は、ぴくんぴくん。

 すーいすーいと息すうと、最後にぷくーんとふくらんで、ぽんと、はじけて、できあがり。

 なべの中に放りこむと、焼きたてお餅は、しゅん、しゅん、しゅん。

 おいしい、おいしい、おしるこです。

「ああ、おいしかった!」

 クルミちゃんと、ノンちゃんと、まっ白うさぎは、お腹を、ぽんっとたたきました。

コメント: 1
  • #1

    しがみねくみこ (土曜日, 31 12月 2022 17:32)

    かぞえうたのお話です。(*^_^*)